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『なまくら』(吉橋通夫/講談社文庫) [時代小説]

第43回野間児童文芸賞受賞作品。

時代小説の括りなのか、児童書の括りなのか若干悩んでみたり。

表題作を含む7つの短編からなる短編集。

時代は幕末から明治へと移行する時期で、京(及びその周辺)が舞台。
その時代に生き、さまざまな理由で働く子供が中心人物となり、それぞれの物語が語られていく。

幕末の激動が描かれているわけでもなく、あくまで、その時代に生きた「子供」が語られていて、剣戟小説のような激しさもないし、明治維新へと向かう時代の激しさといったようなものはない。

けれども、それとは違う、「生きる」ということへの激しさみたいなものが作中に漂っている。
激動の時代の中にありながら、それとは直接関係なく、ただただ「生きる」ために今日も「生きる」、という子供たちの物語といった感じ。

あさのあつこさんが書かれた解説が、この作品の良さを、きれいにまとめてくれているので、そちらを読めば、この作品のポイントのほとんどは抑えられると思います……。


吉橋さん、「季節風」の同人なのか。
と、著者紹介を読んで、今さらながらに知った。


なまくら (講談社文庫)

なまくら (講談社文庫)

  • 作者: 吉橋 通夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/12
  • メディア: 文庫


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『交換殺人には向かない夜』(東川篤哉/光文社文庫) [国内ミステリ]

不倫調査のため、使用人を装い山奥の邸に潜入した私立探偵・鵜飼杜夫。ガールフレンドに誘われ、彼女の友人の山荘を訪れた探偵の弟子・戸村流平。寂れた商店街で起こった女性の刺殺事件の捜査をおこなう刑事たち。無関係に見えた出来事の背後で、交換殺人は密やかに進行していた……。全編にちりばめられたギャグの裏に配された鮮やかな伏線! 傑作本格推理。


いやはや。
帯の「大ホームラン」に偽りなし。
「シリーズ最高傑作!?」というのも偽りなし、かもしれない(『ここに死体を捨てないでください!』未読なので……)。


タイトルで「交換殺人」がテーマであることは明示されていて、どう料理してくるのかと思ったのですが、こうくるとは。
この作品、東川さんの作風だから出来る展開だし、最後のネタばらしの場面でも、それが活きている。
非常にうまい、の一言。

『謎解きはディナーのあとで』も面白かったけれど、こちらはこちらで東川節全開といった感じ。

いやはやいやはや。

久々にやられた。

『謎解きはディナーのあとで』が10万部突破という話を聞いたけれど、そこで東川さんを知った人は、ぜひ、「烏賊川市シリーズ」を読んで、この『交換殺人には向かない夜』にたどり着いてほしいと思わせてくれる一冊。

なお、シリーズ一作目から順に読んで、登場人物たちの性格などを把握しておいた方が、この作品をより楽しめるかと。


交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)

交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/09/09
  • メディア: 文庫



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『もろこし銀侠伝』(秋梨惟高/創元推理文庫) [国内ミステリ]

第3回ミステリーズ!新人賞を受賞した「殺三狼」を含む連作集。
連作短編集と言わないのは、一応、短編3編と中編1本なので。

食べ物飲み物に至るまで刺客に警戒怠りなかった李小遊が、猛毒にあたって死んだ。唯一毒味をしなかった薬のせいに違いないと、薬屋を営む蒲半仙は囚われの身となってしまう。娘の公英が悲嘆に暮れていると、客の雲游がやってきて「心配するな。無実を証明すればいいのだ」と力づける。かくして9歳の少女と不思議な力を持つ老人の探偵行が始まった――(公式サイトより)

南宋とか、明の時代の中国を舞台にしたミステリ。
中国ミステリ? 武侠ミステリ?
なんて言えば良いのかよくわかりませんが。

『水滸伝』も『三国志』もちゃんと読んでいないし、中国もの(?)って、あんまり読んでいないので、最初のうちは、登場人物名等に若干抵抗があり少し手間取ったけれど、慣れてくるとさくさくと読めてくる。

著者があとがきで
このシリーズには一つ趣向があって、それはこの世界でなければ使えないトリック・プロットを用意するということです。(中略)ここで肝心なのは、大真面目に使うこと。変な照れは禁物、あくまでも大真面目に。

と書いているのですが、確かに現代ものでやったら、馬鹿馬鹿しく感じてしまうかもしれないものも、この時代・設定ならありだな、と思わせてくれるので、そんなに違和感や呆れたりすることはない(はず)。

惜しむらくは、『水滸伝』とか読んでないので、登場人物名見てもまったくもってぴんとこないこと……。
そんな自分でも楽しめたので、そういうのを読んでいた人は、もっと楽しめるのではないでしょうか。


読んでいて、唐突に高校の時に『史記』読んでたこと思いだした(さすがに全部は読んでなく、三分の一ぐらいですか)。


もろこし銀侠伝 (創元推理文庫)

もろこし銀侠伝 (創元推理文庫)

  • 作者: 秋梨 惟高
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/09/18
  • メディア: 文庫



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『バカが全裸でやってくる』(入間人間/メディアワークス文庫) [国内エンタメ]

初・入間人間。
正確には、別名義の作品読んでいるので、初ではないのですが……。

作家を目指す「僕」。
「僕」が、大学の新歓コンパに参加していると、そこに全裸の「バカ」が現れて……。


来年から、いろいろなメディアミックス展開がされるし、と思って、とりあえずシリーズ外の本作を読んでみました。
読了後、あぁ、なるほどとは思ったものの……。
連載中の漫画版『みーまー』は読んでいて、そちらの突飛な設定は、面白いのかもと思わせてくれるけれど、それに比較するとこの作品は若干インパクトが弱く感じる。
とはいえ、出てくる登場人物のほとんどは奇人変人ばかりなので、本来ならこれだけでも十分インパクトあるはずなのですが。

読むまで、西尾維新の二番煎じかと思っていたけれども、とりあえず、そうではないと感じられたので、それを知れたのは収穫か。


バカが全裸でやってくる (メディアワークス文庫)

バカが全裸でやってくる (メディアワークス文庫)

  • 作者: 入間 人間
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2010/08/25
  • メディア: 文庫


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『子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき』(玩具堂/角川スニーカー文庫) [国内エンタメ]

第15回スニーカー大賞《大賞》受賞作。

スニーカー文庫買ったの何年ぶりだろう……。
『氷菓』とか『愚者のエンドロール』とか『匣庭の偶殺魔』を買って以来な気がする。

生徒会によって立ちあげられた、生徒の悩みを解決する相談会『迷わない子ひつじの会』。
そこに持ち込まれるさまざまな相談ごと。

生徒会書記の成田真一郎は、相談会の行われる第三会議室の隣にある資料室で幽霊文芸部員の仙波明希と遭遇する。
相談会の面々だけでは解決できなかった問題を解決する仙波ではあったが、それを聞いた成田のとった行動は……。


作中出てくる相談ごとは、ラブレターの差出人は誰? とか、誹謗中傷の書き込みをしているのは誰? と言ったように、そこまでどぎつい内容でもなく、生徒会への相談ごととしては妥当(?)な内容。
日常の謎という感じでもないけれども、高校が舞台の謎としては、良い感じなんじゃないかと思う(ぬるいと思う人もいるだろうけど)。

謎を解いて終わり、ではなく、もう一段階あるのも好感触。
書く方は大変でしょうが(「ダ・ヴィンチ」のインタビュー記事にも書いてあったことですが……)。


子ひつじは迷わない  走るひつじが1ぴき (角川スニーカー文庫)

子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 玩具堂
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/10/30
  • メディア: 文庫


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『コロージョンの夏』(新沢克海/講談社) [講談社BOX]

第二回講談社BOX新人賞 Powers受賞作。
Powers BOX第一弾。

革命家の息子と、そのボーディ―ガードの金髪美少女のお話。
と書くと略しすぎな気もするけれど、間違ってはいないような気もする。

各章の間に、雑誌記事だったり掲示板だったりと、間接的に作品に関わるものが差し込まれているというちょっと変わったスタイル。
作中では(ある程度)前提となっている情報を、こういう形で補完していくというのは良いとは思うのだけれども、一か所、ライナーノーツが入っている箇所(二章と三章の間)だけは、一瞬、どっちから読めば良いのか悩んだので、こういうスタイルも一長一短だなと思ったり。

多少の違和感(?)はあったものの、総じて楽しめる作品だったと思う。


来月発売予定のPowers BOX第二弾の『神戯』が、2分冊でかつ予価2800円というところに、(お財布的な)絶望感を感じつつ、イラスト、mebaeさん(『月見月理解~』の挿絵の人)かと思いつつ、多分、読むんだろうなぁ。年末進行の余波とかなければ。



コロージョンの夏 (講談社BOX)

コロージョンの夏 (講談社BOX)

  • 作者: 新沢 克海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/11/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉/小学館) [国内ミステリ]

「文芸ポスト」「きらら」に掲載された4編と書き下ろし2編、計6編の連作短編集。

謎の解決に対する大きな驚きはさほどないけれど、どの話も、短編ミステリのお手本のように過不足なく情報が提示された上で解決されていき、非常に好感触。
短編という枚数が少ないなかにも情報が十全に提示されているからこそ、読者側も推理して真相にたどり着くことができ、それゆえに大きな驚きがないだけで、この作品の場合、驚きがないというのは決して貶し言葉ではない。

この作品の最大の面白みは、やはり、探偵役の執事が毒舌という設定かと。
主人公の刑事が事件の謎に行き詰まり、執事にその事件のあらましを話すと、執事が謎を解くわけですが、その前に絶対に出てくる、主人公への毒舌。帯にある「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」とか。
少し前に出た麻耶さんの『貴族探偵』とは逆なわけです。というか、主人に暴言吐く執事ってのはあんまりいないか。

本作、読むのを後まわしにしていたのですが、まわりから感想を求められたり、タイトルを目にする機会が増えたりと、早めに読んだ方が良いかなと発売から1カ月遅れで購入したのですが、すでに4刷で、かつアマゾンでも上位にランキングしていて驚きました。
東川さん、いつのまにブレイクしていたのだ。


謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/09/02
  • メディア: 単行本


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『記録の中の殺人』(石崎幸二/講談社ノベルス) [国内ミステリ]


記録の中の殺人 (講談社ノベルス)

記録の中の殺人 (講談社ノベルス)

  • 作者: 石崎 幸二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/11/03
  • メディア: 新書



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『二年四組交換日記 腐ったリンゴはくさらない』(朝田雅康/集英社スーパーダッシュ文庫) [国内エンタメ]

第九回スーパーダッシュ小説新人賞佳作受賞作。

問題児ばかり集められた二年四組。
委員長の提案により、交換日記が行われることになる。
本書は、その交換日記の形式で物語が展開していく。

ひとつの物語としての要素以外に、この交換日記をもとに、異名が書かれた登場人物表に本名を埋めて行くというパズル小説的要素も。

物語中盤あたりで、だいたいの本名は埋まり、そのあたりから物語も大きく動きだすので、タイミングとしては良いのだろうけれど、このパズル小説要素が大きく謳われていたので、てっきりラストまで読まないと、本名すべてが埋まらないとばかり思っていて、ちょっと肩すかしを食らった感はある。


二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫)

二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫)

  • 作者: 朝田 雅康
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/10/22
  • メディア: 文庫



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